概要
6人の職種の異なる紳士たちと給仕が、ゲストの抱える謎めいた話を議論し説明をつける短編集
読んだ理由黒後家蜘蛛の会2を読む目当ては短編集のうちのひとつ「終局的犯罪」である。
FGOというゲームに登場するジェームズ・モリアーティの宝具、そして1.5部「新宿幻霊事件」の元ネタとなった作品だ。
宝具演出の格好よさとストーリーの終盤の演出が好きで読んでみたかった。
宝具の名前はもちろん『終局的犯罪』(ザ・ダイナミクス・オブ・アン・アステロイド)カタカナの方を直訳すると「小惑星の力学」となる。
これは原作のシャーロック・ホームズでモリアーティが執筆した論文である。論文の内容は原作では明らかになっていないが、考察は存在しており、それこそが黒後家蜘蛛の会2にて書かれるタイトル「終局的犯罪」なのだ。
「小惑星の力学」考察の要約

火星と木星に存在する小惑星が話の論点となる。
シャーロック・ホームズが描かれた当時、一つの小惑星の爆発によって現在に存在する多くの小惑星ができたとする説が濃厚だった。
惑星が何らかの原因で破壊されて小惑星帯が作られたとする惑星破壊説が唱えられたこともあったが、メインベルトの小惑星の質量を合計しても惑星の質量には到底達しないことなどから、現在は支持されていない。
引用元:Wiki
「小惑星の力学」で書かれたこと
小惑星の爆発はなぜ起こったのか

爆発によってもたらされる結果は何かが書かれているのではないかと考察された。のみならず爆発を人為的に起こすことは可能なのかまでが執筆されている可能性が高い。
モリアーティが論文を書いた理由一つの世界を破壊するに等しい惑星の爆発は、破壊と混乱を自らの手でもたらすことを喜びとするモリアーティの歪んだ性格に沿うものである。
地球の破壊これがモリアーティの本当になし得たかったことなのではないか。故に小惑星を人為的に破壊するための計算、その結果を論文に記したのだ

実際に論文が存在するとしたらなぜ世に出ていないのか
その答えは前述の通り計算上は地球という惑星を破壊できる方法、あるいは手がかりが論文に書かれていたからだ
読み終わった感想
モリアーティの性格、論文が存在しない事実、論文の内容すべてに辻褄が合う説明がされていて気持ち良かった。
説明部分だけ何度も読み返して
「そういうことー!?そんな、論文のタイトルだけ見てモリアーティの性格と論文の存在まで考慮した考察とかできるん?すごいな!!!?これ作者が考えたの?ヤバ!!」ってなった。
もう誰かに話したくて仕方なかったから、お正月で実家に帰省した際にFGO好きな弟に話して、でも上手く話せなかったから結局旦那に全部聞いてもらった。
FGOのことは3年ほど前から好きだったけれど、元ネタに触れるとより一層後戻りできなくなるなぁ。
これからは新チャの宝具を打つたびに「小惑星の力学」を書いたことを思い出すし、未遂に終わったけれども地球を破壊しようとした悪人だということを再認識するんだろう。
そんな新チャもサーヴァントになった今、マスターに害が及ぶようなことはしないし、むしろ害が及ばぬようあらゆる知恵を貸してくれる頼もしい存在なんだよ。
悪人であればあるほど仲間になったときの嬉しさがあるよね。
それでも宝具は地球を破壊するための論文のタイトルなんだぜ胸が熱い。
FGOの元ネタを意識して本を読むのはこれで二度目なんだけど、やっぱりいいよね。沼にズブズブ嵌まっていってる気がする。
沼に沈めば沈んだだけ楽しい人生が待っている気がするし、沼に溺れて得た知識・経験を誰かに話したり書き残すことも楽しい。
そういえばFGOの元ネタを読むキッカケをくれたのは新宿紀伊國屋のFateフェアだった。
そこにはスタッフの一言カードどともにFGOの登場人物やストーリーの元ネタに関する書籍だけがズラっと並んでいる。
まさに夢のような企画…東京に住んでて本当によかったと思った。
ちなみに元ネタ本の1冊目として読んだのは葛飾北斎もとい娘の応為の人生について描かれた「眩(くらら)」という書籍だった。
紀伊國屋のFateフェアでたくさんの本を買ったけれど読んだのはこの2冊だけ。残りは私の本棚で読まれるのを待っている。もうちょっと待っててくれ。ごめんな。
今回読んだ黒後家蜘蛛の会2はおそらく1年くらい私のベッドの枕元で読まれるのを待っていた。
一度読もうとして挫折したばかりに埃を被ったまま放置してしまった。
読むのが遅い私としては新規の本を読むハードルが高いんだよな。
まず設定を理解するのが疲れるし登場人物の名前が覚えられない。
最初に読んだときは7人の登場人物を全員覚えようとして面倒くさくなって読むのをやめたことを思い出した。
お正月の時間があるときに読み終わって本当によかった。
おかけでまたひとつ楽しい知識が増えた。
この本のおかげでカレンダーは28年周期で全く同様のものになることもわかったし、タイプライターにおける「1」「0」は「l(エル)」「o(オー)」を兼ねていることもわかった。
こういう無駄な知識が増えるのも本を読む楽しさだったなと思い出すことができた。